前回は認知症の中核症状、①記憶障害、②見当識障害、③実行機能障害への対応法を述べました。
今回は中核症状にともなってあらわれてくる周辺症状と呼ばれる行動心理症状(BPSD)への対処を考えます。
実際にいないものが見えたり、見間違えたりすることがあります。
レビー小体病の人に初期から見られます。
軽症者には、脳の見えるところに障害があって幻が見えるけど現実のものではないと、くり返し説明します。
天井裏に人がいると言うときは、理屈から言って、いるはずがないと説明した方がよいようです。
虫がいっぱいいると興奮しているときなどは、消臭スプレーなどで虫を追い払ったりするふりをして安心させます。
部屋を明るくする、見通しよく片付ける、壁のしみ などは取り除いておくと幻視は減るようです。
物盗られ妄想や嫉妬妄想などで、病気になる前はとてもしっかりしていた人が多いようです。
妄想の対象となる人は一番身近な人で、介護の気力を失わせかねません。
「なくなりましたか」、「困りましたね」などと相槌を打ちながら訴えを、否定もせず、肯定もしない態度で接することが大切です。
どうしても関係が修復できないときは、施設への入所など一時的に介護環境を変えてみることも有効です。
徘徊する理由はいくつかあるようです。
①道迷い
②ある目的で外出する
③出かけたが目的や目的地を忘れて徘徊する
④せん妄による徘徊
⑤今いる場所から離れたくて出歩くなど。
徘徊癖のある方の安全をまず確保します。
連絡先を書いたものを身につける、GPS器具を身につける、警察や商店などに届けておく、発見しやすいように明るい色の服や帽子を着せる、夜間目立つように服や靴に反射素材を取り付けておく、などです。
外出しようとするときは、よく話を聞いて切迫した気持ちに共感することが先決です。
そのうえで、外出しないで済むような言葉かけや、話題をそらせて外出する気持ちを忘れさせます。
どうしても止められないときは一緒に出かけるかしばらくして迎えに行きましょう。
今住んでいる場所が居心地のいい場所になるよう努めましょう。
①食べない、②風呂に入らない、③着がえない、④薬を飲まないなど。拒否するのは本人にそれなりの理由があるはずで、その原因をさぐってみます。
そのうえで、①食べないに対しては、時間をずらす、好きなものをだす、硬さ・形・大きさを変える、食器の位置を変えるなど。
②風呂に入らないに対しては、手を変え品を変え時間を変えて入浴に誘います(「温泉に入りましょう」、「病気になったら困るから」、「足だけでも洗いましょう」)。
どうしても入浴できない場合はデイサービスや入浴サービスを利用しましょう。
③着がえないに対しては、脱ぎ着しやすい本人の好みの服を用意する、など。
④服薬拒否には、納得しやすい説明(お医者さんが出している血圧・心臓の薬)と飲みやすい形・回数・必要最低限に減らしてもらうなど。
認知症の方は些細なことで興奮したり暴力をふるうことがあります。
とにかく注意をそらす手段を見つけましょう。
本人の好きなパズルや編み物などに誘う、なじみの歌を歌うなど。
身の危険を感じたら、いったんその場を離れます。
くり返し続く場合はクスリを使う方法もあるので医師に相談してください。
ちょっと元気がなくなり何かをする気持ちが湧いてこない状態になることがあります。
本格的なうつ病とは違って長く続かず自然によくなることが多いようです。
無理に励まさず、明るい言葉かけをして、部屋も明るくする、若い時の流行歌を聞かせる、若いころの楽しかったことなどを話題にするなど、楽しい雰囲気をつくるよう心掛けます。
症状が長く続くときは医師に相談しましょう。
茨木診療所 所長
安達 克郎
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